今度は私たちの番だ――。宮城県気仙沼市の離島・大島にあるつばき油製造会社の元社長が、土石流に見舞われた東京・伊豆大島の支援に乗り出した。ツバキが縁となって東日本大震災の際に受けた援助のお返しにと、義援金を募っている。
「お手伝いできることがあれば」。土石流発生後の10月21日、伊豆大島のつばき油製造会社「椿」の社長、日原行隆さん(72)にメールが届いた。気仙沼市の大島にある同業者「椿屋食品」の元社長、小野寺栄喜さん(66)からだった。
2人の出会いは震災直後にさかのぼる。2011年3月11日午前、小野寺さんの元に伊豆大島から取り寄せたツバキの苗木が届いた。しかし、その日の午後に震災が起き、代金は送れず、電話も不通に。約1カ月後に岩手県の郵便局まで行き、ようやく振り込んだ。「何があっても約束は約束。払えてほっとした」
この話を伝え聞き「東北人の実直な人柄に感激した」という男性が突然訪れ支援を申し出た。それが日原さんだった。
高台にあるツバキ農園は津波を免れたが、種から油を搾る搾油機を持つ業者が被災した。「機械さえあれば……」。そう漏らすと、会社の予備機を無償で提供してくれた。小野寺さんは「喉から手が出るほど欲しく、うれしかった」と振り返る。
日原さんはその後、伊豆大島や東北でチャリティーコンサートを開催。小野寺さんも伊豆大島をたびたび訪れて交流を深め、船を失った気仙沼の漁師にと、地元漁協から小型船5隻を贈られた。
35人の命を奪い、4人が行方不明となった今回の土石流災害。「こちらも復興の途中だが、できる限りのことをしたい」と小野寺さん。年内に50万円の義援金を集め、もう一つの大島に届けたいと思っている。